*この話は、シナリオ担当者が小学校の時に、先生から聞いたお話をまとめたものです…。
疎開先(←違ったかもしれません)かどこかで、クラスの女子全員と広い部屋で一同に眠っていたときのことだそうです。
ある夜、寝ていると、ひとりの女の子がひどくうなされ始めました。
心配になった周りの子が起こすと、その子は汗びっしょりで、「白いきつねが夢に出てきた」と言うのです。
最初はみんな、ただ悪い夢を見ただけだろうと思っていました。
けれど、その次の夜、今度は違う女の子が、また、ひどくうなされました。
そしてその子も「白いきつねが」と言うのです。
その日から、まるで伝染するように、夜、うなされる子が続出し始めました。
その誰もが、夢で「白いきつね」を見ていました。
クラスはパニックになり、先生もいつ、自分のところにきつねがやってくるかと、とても怖かったそうです。
しかし、結局先生のところにはきつねは現れませんでした。
――やがて、そんなことは忘れ、先生は大人になりました。
そんなある日、先生が寝ていると、ぐうっと胸が苦しくなりました。
何かに押しつぶされるようで、息ができません。
体も動きません。
必死に目だけを動かすと、動物の白い足が2本、胸の上に乗っているのが見えました。
その瞬間、先生はあの夜のことを思い出したそうです。
「おきつね様だ!」と。
きつねの全身は見えなかったのに、なぜか、そう思ったそうです。
どんどん胸が締めつけられ、苦しくて、必死にもがきました。
でも、動けないし、声も出ない。
けれど、突然、体が楽になりました。
気づくと、隣の部屋で寝ていたお姉さんが、先生を起こしてくれていました。
ひどいうめき声が聞こえて、心配になったのだそうです。
…先生の体験したお話は、それでおしまいでした。
ただそれだけです。
けれど、先生は最後にこう言ったのです。
「大人になってこのお話を忘れた頃、きっと、みんなのところにもおきつね様がやってくるよ…」
* * *
*改めて書くと、それほど怖い話ではないのですが、先生の語りがうまかったのでしょう。
幼い私には、お話自体も十分怖かったのですが、特に、先生の最後の一言が、やたら怖かったのをよく覚えています。
このお話は、一応、先生の体験話ということですが、そういう演出でお話してくれただけかもしれませんし、また、小学二年生の頃の記憶なので細部は曖昧です。
細かいところにはどうかこだわらないでくださいね。
最後に一句。
幽霊は
忘れた頃に
やってくる
(きつねですけど)
おしまい…